大人のインテリジェンス!将棋にチャレンジしてみよう
羽生善治竜王の国民栄誉賞や藤井聡太六段の快進撃など、にわかに将棋界への注目が集まっています。
また竹俣紅女流初段など、アイドル顔負けの女性棋士もメディアでよく見かけるようになりました。
しかし実際に将棋を指したことのある、まして趣味にしている方はそう多くないでしょう。
将棋が敬遠されやすい理由はいくつかあります。
・なんだか難しい
・ルールが複雑そう
・そもそも相手がいない
・はっきり言って地味、など
しかしそう難しく考えることはありません。
素人が楽しむ分にはお手軽にできる「和製ボードゲーム」なのです。
私はタブレット端末に将棋アプリを入れて持っているのですが、これさえあれば盤や駒を持ち歩く必要もなし。
ちょっとした時間に、旅先でも、将棋が出来てしまうのです。
将棋でまず必ずしなければならないのは、最初の駒の並べ方と駒の動きを覚えることです。
しかし、パソコンやタブレットなら駒を自動で並べてくれますし、動ける位置にしか駒を動かすことができません。
いきなり最初のハードルが低い状態で始めることができておススメです。
将棋の楽しさを感じながら徐々に覚えていけば全く問題ありません。
またお相手が経験者や中級者以上なら、飛車、角などの主要な駒を抜いてもらって勝負しても良いのです。
特別な手加減でも何でもなく、実力差がある同士が「○○落ち」と言って、強い駒を抜いて戦うのはずっと以前からされていること。紳士のスポーツであるゴルフにハンデがあるように、将棋にもまたハンデ戦というのがあるのです。
勝つことだけが目的ではなく、より面白い勝負を楽しむ、というのがいかにも日本人の気質に合ったゲームと言えるでしょう。
さらに将棋を楽しみたいなら「囲い」や「戦型」を1つでも覚えておくことです。
これを覚えるといまやネットでも中継されているプロの対戦も面白く観ることができます。
分かりやすいのが「居飛車」と「振り飛車」という2つのタイプ。飛車は将棋の中でも最も攻撃力の高い駒で、これをどう使うかが勝負では重要です。居飛車は、序盤、最初に置かれた場所から横方法に動かさず、縦の動きをメインに戦う形です。一方、振り飛車は序盤で横に動かして、臨機応変に飛車の機動力を使っていくような戦い方です。
武器を左に構えるか、右に構えるか、という作戦の違いといえます。
また、この2つと組み合わせて覚えたいのが「囲い」。
囲いとは守りの形です。将棋は王将を取られないように守りながら相手の王将を追い詰めていくゲーム。
序盤にできるだけ王将を安全にしておいて、飛車や角といった強い駒を使って攻めていくのがセオリーです。
また、オーソドックスな形は、「武器(飛車)を持った手とは逆の手に盾(囲い)を構える」と考えておけばいいでしょう。この囲いには金、銀といった、機動力はあまりないけれど動ける方向が多い駒を使います。
この駒が王将の近くにいてくれると相手が攻撃しにくく、堅い守りとなるのです。攻撃の飛車と金銀の守り、この2つを頭に入れておくだけで充分いい形になります。全く初めての方であってもゲームとして成立するようになるでしょう。
さらにもうひとつ、羽生竜王いわく「屋根のような働き」をしてくれるのが歩です。
実は将棋には格言がたくさんあって、その通りに指し進めていくことができたとしたら相当な上級者になれるほどです。
その中でも歩にまつわる格言というのは多く、それだけ大切な駒とされているのです。
特によく知られているのが「と金」です。
将棋の駒は、相手の陣地である相手側から3マス分に攻め込むと「金」と同じ動きが出来ます。
一歩ずつ前にしか進むことの出来なかった歩が、王将を守るのと同じ力を持った駒に変身する。これを1つでも多く作れば勝つ可能性も高くなります。ちなみに強い駒である飛車が「成る」と、飛車の動き+斜めに一コマずつ動ける「竜」に。角が成ると、角の動き+前後左右に一コマずつ動ける「馬」に変身します。
将棋の盤の中ではこの2つが最強とされていて、相手より早くこの駒を作った方が有利とされています。
将棋はチェスと似ていますが、チェスにないのがこの「成る」という考え方です。もうひとつ、将棋の大きな特徴は取った駒を置いて自分のものとして使うことができる、という点です。つまりまずは相手の駒を相手より多く取り、盤の上の駒をパワーアップさせ、王将を追い詰めていく、というゲームなのです。
将棋の面白いところは「必勝法がない」ということでもあります。
あんなに強い羽生竜王でも、天才藤井六段でも、負ける時は負けます。相手の打ち方によって無限ともいえる戦い方のパターンがあるからだと言えるでしょう。
男性でも女性でも、真剣に考えている時の表情には魅力があります。普段は冗談ばかり言って笑っている彼も、マイペースでのんびりの彼女も、盤上の、無限ともいえる選択肢と向き合っている表情はきっと凛々しく、意外な一面にもなるのではないでしょうか。もちろん一度覚えたら一生楽しめるゲームでもあります。
流行に乗るのも良し、日本の大人のインテリジェンスとして、将棋をちょっとかじってみるというのもなかなか風流ではないでしょうか。